お祝いの袋を選ぶとき、売り場で「花結び」「蝶結び」「結び切り」と書かれた表示を見て、手が止まった経験はありませんか。見た目が華やかな花結びは、結婚祝いにも向いていそうに見えます。ところが、結婚式の場面では一般的に避けられる結び方です。名前の印象と実際の使い分けがずれているため、迷う人が多いのです。
先に結論をお伝えすると、水引の花結びは「蝶結び」と呼び名が違うだけで、同じ結び方です。ほどいて何度でも結び直せることから、出産・入学・新築・お中元やお歳暮など、何度あっても喜ばしいことに使います。反対に、結婚式やお見舞い、快気祝いのように「一度きりであってほしいこと」には、ほどけない結び切りやあわじ結びを選ぶのが一般的です。
この記事では、花結びの意味と由来、使える場面と避けられる場面の見分け方、ほかの結び方との違い、色と本数の選び方、そして水引の歴史までを順番に整理します。丸暗記ではなく「なぜそうするのか」から理解しておくと、初めての場面でも落ち着いて選べます。
・水引花結びと蝶結びが同じ結び方である理由と、込められた意味
・花結びを使う場面と、結婚式・お見舞いで避けられる理由
・結び切り・あわじ結びなど、ほかの結び方との使い分け
・水引の色と本数(5本・7本・10本)の選び方と、迷ったときの判断基準
水引花結びとは?「何度でも結び直せる」ことに意味がある結び方

花結びと蝶結びは、呼び名が違うだけで同じ結び方
まず押さえておきたいのは、「花結び」と「蝶結び」は別々の結び方ではなく、同じ結び方を指しているという点です。店頭やネット通販で表記が分かれていても、中身は同じと考えて問題ありません。
呼び名が2つある理由は、結び目の見え方にあります。左右に輪が広がった形が蝶々の羽のように見えることから「蝶結び」、その姿が華やかで花が咲いたように見えることから「花結び」とも呼ばれるようになりました。蝶々結び(ちょうちょむすび)と書かれることもあります。つまり、どの呼び名も「形の見立て」から生まれた愛称のようなものです。
やりがちなのは、「花結び」という名前だけを見て、特別に格の高い飾り結びだと思い込んでしまうケースです。商品ページで「花結び」とあり、別の商品で「蝶結び」とあると、違う用途のものに見えてしまいます。実際には同じ結び方なので、使える場面・避けられる場面も同じです。
迷ったときは、名前ではなく「結び目の形」を確認するのが確実です。中央から左右に輪が出ていて、端を引けばほどけそうな形なら花結び(蝶結び)です。反対に、結び目がきゅっと固く締まっている形や、輪が複雑に絡み合った形は、結び切りやあわじ結びの仲間と考えてよいでしょう。
「ほどける」ことに込められた、繰り返しを願う気持ち
花結びの意味は「何度繰り返してもよいことを祝う」です。片側を引けば簡単にほどけ、また結び直せる。この性質そのものが、「この嬉しい出来事が何度あってもいい」「またお祝いさせてほしい」という願いを表しています。
水引の結び方は、見た目の好みで選ぶものではなく、結び方の性質にお祝いの気持ちを重ねて選ぶものです。ほどけやすいから手軽、という意味ではありません。「何度でも結び直せる」ことが、そのまま「何度でも来てほしい喜び」の象徴になっているわけです。こうした背景を知っておくと、同じ花結びでも、贈る側の気持ちがきちんと伝わる選び方になります。
よくある思い違いは、「ほどける結び方=略式で軽い」と受け取ってしまうことです。花結びは、出産祝いや入学祝い、お中元・お歳暮など幅広く使われる、もっともなじみのある水引です。場面に合っていれば、格が低いと見なされる心配はありません。
ただし、受け取る側がどう感じるかは、地域や家ごとの習慣によって違う場合があります。とくに目上の方への贈り物や、改まった場面では、結び方だけでなく本数や色も合わせて考えると安心です。本数と色は後半で詳しく整理します。
水引=和紙などを細くこより状にし、表面を整えてつくられた飾り紐。祝儀袋や贈答品の包み紙を結ぶのに使う。
花結び(蝶結び)=蝶々のような形に結んだ水引。簡単にほどけて何度でも結び直せることから、何度あってもよいお祝いに使う。
結び切り=固く結ばれて離れない結び方。一度きりであってほしい事柄に使う。
そもそも水引は何のためにかけるのか
水引は、単なる飾りではありません。慶事や弔事で贈られる品物の包み紙を結ぶ飾り紐で、「品物が未開封であることの証明」「魔除け」「人と人の結びつき」という意味が込められていると説明されています(出典:マイナビウエディング「水引とは」)。
包みを紐で結んでおけば、途中で誰かが開けていないことが一目でわかります。これが「未開封の証明」です。そして結ぶという行為は、贈る人と受け取る人のご縁をつなぐことにも重ねられてきました。だからこそ、どんな結び方を選ぶかに「この出来事をどう願うか」という意味が宿るのです。
現在では、祝儀袋やのし紙に水引が印刷されているものも多く、実物の紐を結ぶ機会は減りました。印刷の水引でも、結び方の意味は同じように受け取られます。「印刷だから気にしなくていい」と考えず、描かれている結び方が場面に合っているかを確認しましょう。
また、水引の素材は和紙をこより状にしたもので、表面に米糊を使って光沢を出す加工がされています。手に取ったときの張りやつやは、この加工によるものです。素材を知っておくと、贈る品物を包むときにも、ていねいに扱う気持ちが自然と生まれます。
実は「花結び=花の形の水引」ではないという落とし穴
意外と知られていないけれど、「花結び」という言葉から、梅の花や桜の花をかたどった立体的な飾り水引を思い浮かべる人は少なくありません。しかし、先に見たとおり、花結びは蝶結びと同じ「ほどける結び方」の名前です。花の形をした飾りの名前ではありません。
この取り違えが起きやすいのは、華やかな祝儀袋ほど、鶴や花をかたどった飾りが付いているからです。袋全体の印象が「花」でも、中心の結び目があわじ結びや結び切りなら、婚礼向きの袋です。逆に、飾りが控えめでも、結び目が蝶結びなら、何度あってもよいお祝い向きの袋になります。
具体的な失敗例としては、「花の飾りが付いているから花結びだろう」と判断して、結婚祝い用の袋を出産祝いに使う、あるいはその逆をしてしまうケースです。飾りの形と結び方を切り分けて見ると、この迷いはほぼなくなります。
見分けるコツは、飾りではなく「結び目の中心」を見ることです。売り場の表示や商品説明に「結婚祝い用」「一般お祝い用」などの用途が書かれていれば、それも確認しましょう。花の形をした水引そのものや、植物のミズヒキについては、別の記事で詳しくまとめています。

花結びが選ばれるのはどんな場面?「何度あっても嬉しいか」で見分ける
出産・入学・新築・開店など、人生の節目のお祝い
花結びがもっともよく使われるのは、人生の節目のうち「繰り返しても喜ばしいこと」です。出産祝い、入学祝い、新築祝い、開店・開業祝い、長寿のお祝いなどが代表的な例として挙げられています(出典:bizoceanジャーナル「水引の種類と使い分け」)。
理由はシンプルです。子どもの誕生も、進学も、お店の繁盛も、何度あっても周りの人が一緒に喜べる出来事だからです。「またおめでとうと言わせてね」という気持ちを、ほどけて結び直せる花結びに込めます。長寿のお祝いも同じで、「これからも節目を重ねてほしい」という願いと重なります。
よくある迷いは、「入学祝いは一度きりの行事では?」という疑問です。たしかに同じ学校への入学は一度ですが、進学や成長の節目としては何度も訪れます。ここで考えるべきは「その出来事が繰り返されて困るかどうか」です。困らない、むしろ嬉しいのであれば、花結びで問題ありません。
ただし、贈る相手の地域や家の習慣によって、慣れ親しんだ袋の形が違う場合もあります。親族同士のお祝いなら、身内の年長者に「うちではどうしている?」と一言聞いておくと、選び方のずれを防げます。
お中元・お歳暮・お年賀・お礼など、日々の挨拶
花結びは、特別なお祝いだけでなく、季節の挨拶やお礼の品にも幅広く使われます。お中元、お歳暮、お年賀、一般的なご挨拶、粗品、お礼などがその例です。
これらに花結びが合うのは、季節の挨拶もお礼も「これからも続けてお付き合いしたい」という関係の継続を表すものだからです。毎年巡ってくるお中元やお歳暮は、まさに繰り返すことに意味がある贈り物です。ここで一度きりを意味する結び切りを選ぶと、気持ちとちぐはぐになってしまいます。
具体的な場面で考えてみましょう。引っ越しの挨拶で近所に品物を配る、仕事でお世話になった取引先にお礼を渡す、年始に親戚の家を訪ねる。いずれも「今後ともよろしくお願いします」という気持ちが中心なので、花結びがなじみます。
注意したいのは、同じ「お礼」でも、お見舞いのお返しである快気祝いは例外になる点です。「病気やけがが繰り返されないように」という願いが優先されるため、花結びではなく結び切りを使うのが一般的です。お礼という言葉だけで判断せず、何に対するお礼なのかを確認しましょう。
迷ったときの判断基準は「もう一度あってほしいか」
結び方で迷ったら、「この出来事は、もう一度あってほしいか」と自分に問いかけてみてください。答えが「はい」なら花結び、「いいえ、一度きりであってほしい」なら結び切りかあわじ結び。この一つの問いで、ほとんどの場面は判断できます。
この基準が有効なのは、水引の使い分けそのものが「繰り返しを願うか、願わないか」という考え方で成り立っているからです。個々の場面を一つずつ覚えなくても、根っこの考え方を持っておけば、初めて出会う場面にも応用がききます。
たとえば、結婚は「二度目があってほしくない」出来事なので結び切りやあわじ結び。病気やけがのお見舞い、快気祝いも「繰り返したくない」ので結び切り。出産や新築は「何度あっても嬉しい」ので花結び、という具合です。
ただ、境目があいまいに感じる場面もあります。そのときは、贈る相手との関係や地域の習慣を優先し、取り扱う店の人に用途を伝えて相談するのが確実です。売り場のスタッフは用途別の袋の違いに慣れているので、「結婚祝いです」「出産のお祝いです」と伝えれば、適した袋を案内してもらえます。
結婚式で水引花結びを避けるのはなぜ?一度きりを願う婚礼の考え方

「一度きりであってほしい」婚礼には結び切り・あわじ結び
結婚祝いやご祝儀袋では、花結びは一般的に避けられ、結び切りやあわじ結びが選ばれます。理由は、花結びの「何度でも結び直せる」という意味が、結婚においては「二度目の結婚」を連想させるためです。結婚は一度きりであってほしい、という考え方が背景にあります。
一方、結び切りは固く結ばれて離れない結び方、あわじ結びは両端を引っ張るとさらに強く結ばれる、ほどけにくい結び方です。この「ほどけない」性質が、「二人の縁が末永く続くように」という願いと重なります。とくにあわじ結びは、末長い縁、共に生き老いるという願いを表す結び方として、婚礼で多く使われています。
具体的には、結婚式に持参するご祝儀袋、結婚のお祝いの品、結納品などが該当します。ゲストとして結婚式に招かれた場合は、まず袋の結び目が結び切りかあわじ結びになっているかを確認しましょう。婚礼用の袋は、水引の本数が10本になっているものが多いのも特徴です。
なお、結婚式でも「花の飾りが付いた袋」を使うのは問題ありません。大切なのは結び目の種類です。地域によって好まれる袋のデザインは異なる場合があるため、親族として包む場合は、家族の年長者に確認しておくと安心です。

お見舞い・快気祝いも「繰り返したくない」ので結び切り
結婚式と並んで、花結びが避けられる代表的な場面がお見舞いと快気祝いです。どちらも「一度きりであってほしい事柄」なので、結び切りを使うのが一般的とされています。
お見舞いの場合、花結びの「何度でも」という意味が「病気やけがが繰り返される」ことを連想させてしまいます。回復を願う気持ちで贈るものだからこそ、「もう二度とこうしたことがないように」という願いを込めて、ほどけない結び切りを選びます。
快気祝いは、お見舞いをいただいた方へのお返しです。「おかげさまで元気になりました」という報告とお礼を兼ねるため、ついお礼の品として花結びを選びたくなります。しかし、ここでも「病気が繰り返されないように」という意味が優先され、結び切りの水引で5本を使うのが一般的とされています(出典:ギフトエイド「水引の種類」)。
注意したいのは、お見舞いの品を贈るタイミングや品物の選び方には、相手の体調や入院先の決まりなど、水引以外にも配慮すべき点がある場合があることです。水引の選び方で迷ったら結び切りを選び、それ以外の点は相手の家族に確認するのが確実です。
| 項目 | 花結び(蝶結び) | 結び切り | あわじ結び |
|---|---|---|---|
| 結びの性質 | 簡単にほどけ、何度でも結び直せる | 固く結ばれて離れない | 複雑でほどけにくく、両端を引くと強く結ばれる |
| 込められた意味 | 何度あってもよい、喜ばしい | 一度きりであってほしい | 末長い縁、共に生き老いる |
| 主な場面 | 出産・入学・新築・開店祝い、お中元・お歳暮・お礼 | 婚礼、弔事、お見舞い、快気祝い | 婚礼、結納、地域によっては慶弔両用 |
| 結婚式での扱い | 一般的には避けられる | 使える | 婚礼で多く使われる |
やりがちな失敗:「華やかだから」と結婚祝いに蝶結びの袋を選ぶ
結婚式の前日に慌てて祝儀袋を買いに行き、見た目の華やかさで選んだら蝶結びだった――というのは、よくある失敗の一つです。花結びは名前も見た目も祝い事らしいので、「結婚式にぴったり」と感じてしまいやすいのです。
原因は、「お祝い用の袋はどれも同じ」と考えてしまうことにあります。売り場には、出産祝いや入学祝いにも使える一般お祝い用の袋と、結婚祝い用の袋が並んで置かれていることがあります。どちらも紅白や金銀の華やかな色なので、色だけで選ぶと取り違えが起きます。
対策は、購入前に次の3点を確認することです。一つ目は、結び目が結び切りかあわじ結びか。二つ目は、袋や包装に「結婚祝い用」「寿」などの用途が示されているか。三つ目は、水引の本数が婚礼向きの10本になっているか。この3点がそろっていれば、取り違えの心配はほぼなくなります。
もし当日になって花結びの袋を買ってしまったと気づいた場合は、式場近くのコンビニや売店で婚礼用の袋を探し直すのが確実です。受け取る側が気にしない場合もありますが、年配の親族が目にする場面もあるため、一般的な選び方に合わせておくと安心です。
紅白や金銀の袋でも、結び目が花結び(蝶結び)なら一般お祝い用です。原因は「華やかな色=結婚式向き」という思い込み。対策は、①結び目が結び切り・あわじ結びか、②用途表示に結婚祝い用とあるか、③水引が10本かの3点を購入前に確認すること。飾りの形ではなく、中心の結び目で判断しましょう。
花結び以外に何がある?結び方の種類と込められた意味
結び切り:固く結ばれて離れない「一度きり」の結び
結び切りは、固く結ばれてほどけない結び方です。花結びと対になる存在で、「一度きりであってほしい事柄」に使います。婚礼、弔事、お見舞い、快気祝いがその代表です。
この結び方が選ばれる理由は、形そのものにあります。ほどいて結び直すことができないため、「繰り返さない」「これで終わりにする」という意味が生まれます。お祝い事と弔事の両方に使われるのは、「二度とないように」「一度きりであるように」という願いが、どちらにも共通しているからです。
具体的な場面では、結婚式のご祝儀袋や、病気見舞いの袋、快気祝いのお返しの掛け紙などで目にします。慶事か弔事かは結び方ではなく色で区別するので、結婚祝いなら紅白や金銀、弔事なら白黒などの色になります。同じ結び切りでも、色が違えば用途はまったく別物です。
注意点として、結び切りは「結び方の名前」と「使う場面の考え方」の両方で呼ばれることがあり、あわじ結びを結び切りの一種として説明する資料もあります。細かな分類にこだわりすぎず、「ほどけない結び方」という共通点で理解しておけば、実際の場面で迷うことはありません。
あわじ結び:末永い縁を願う、婚礼でもっとも身近な結び
あわじ結びは、輪が複雑に絡み合った美しい結び方で、ほどけにくいのが特徴です。両端を引っ張ると結び目がさらに強く締まることから、「末永く続くように」という願いを込めて、婚礼の場面で多く使われています。
結婚祝いのご祝儀袋を思い浮かべたとき、中央に輪が組み合わさった結び目があれば、それがあわじ結びです。「共に生き老いる」「末長い縁」という意味が込められていて、結婚する二人へのお祝いの気持ちとよく重なります。結納品に使われることもあります。
あわじ結びの特徴として覚えておきたいのは、慶事にも弔事にも使える結び方である点です。色を変えることで、お祝いにもお悔やみにも使われます。ただし、慶弔両用として扱うかどうかは地域によって異なる場合があるので、弔事で使う場合は地域の習慣を確認しましょう。
やりがちな誤解は、「あわじ結びはほどけないから、何にでも無難」と考えることです。出産祝いやお中元など、何度あってもよいお祝いに使うと、「繰り返さないように」という意味と気持ちがずれてしまいます。婚礼など一度きりを願う場面の結び方、と位置づけておくと使い分けやすくなります。
梅結び・相生結び・両輪結び:花結びと混同しやすい飾り結び
水引の結び方は、花結び・結び切り・あわじ結びだけではありません。結び方は20種類以上あるとされ、飾りとして使われる結び方も多くあります。その中で、名前や見た目から花結びと混同しやすいものを整理しておきましょう。
梅結びは、梅の花のような形に結ぶ結び方で、固い絆や無病息災、運命向上の願いを表すとされています。相生結びは、「共に生き老いる」という縁結びの意味を持つ結び方です。どちらも花の形や縁結びを連想させる名前ですが、花結び(蝶結び)とは別の結び方です。
また、両輪(花)結びは、水引の基本的な結び方の一つで、贈り物に華やかさを加える装飾として紹介されています。名前に「花」が入っているため、花結びと同じものだと思い込みやすい点に注意が必要です。
こうした飾り結びを見分けるときも、考え方は同じです。名前や花の形に引きずられず、「ほどけるか、ほどけないか」「何を願う場面か」を基準にします。飾り結びの細かな使い分けは、地域や作り手によって説明が異なることもあるため、改まった場面では用途表示のある市販の袋を選ぶのが確実です。
| 結び方 | 込められた意味 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 花結び(蝶結び) | 何度繰り返してもよい | 出産・長寿・開店・お中元・お歳暮 |
| 結び切り | 一度きりであってほしい | 婚礼・弔事・お見舞い・快気祝い |
| あわじ結び | 末長い縁、共に生き老いる | 婚礼・結納(地域によっては慶弔両用) |
| 梅結び | 固い絆、無病息災、運命向上 | 飾り結びとして使われる |
| 相生結び | 共に生き老いる縁結び | 飾り結びとして使われる |
出典:bizoceanジャーナル、BECOS Journal、東京水引の解説記事(2026年9月時点の公開情報)をもとに結婚式の教科書が作成。用途は地域や家によって異なる場合があります。
色と本数はどう選ぶ?紅白・金銀と5本・7本・10本の考え方
慶事は紅白・赤金・金銀、弔事は白黒・黄白など
水引は、結び方で「繰り返すかどうか」を表し、色で「慶事か弔事か」を表します。慶事には紅白・赤金・金銀、弔事には白黒・黄白・青白・銀が多く使われます。花結びはお祝い事に使う結び方なので、基本的には紅白などの慶事の色と組み合わせます。
色で慶弔を区別する考え方は、本来は陰陽五行思想に基づくものとされています。結婚式では金銀が多く使われ、一般的なお祝いやお中元・お歳暮では紅白がよく選ばれます。どちらもお祝いの色ですが、金銀は婚礼など改まった場面で目にすることが多い色です。
弔事の色は地域による違いがあり、双白や双銀が使われる地域もあります。また、忌明け後には白黄が使われることもあります。お悔やみの場面では花結びは使わないので、この記事のテーマからは外れますが、「白黒だけが弔事の色ではない」ことを知っておくと、贈り物の取り違えを防げます。
迷ったときの目安としては、何度あってもよいお祝いなら紅白の花結び、結婚祝いなら紅白か金銀の結び切り・あわじ結び、と覚えておけば十分です。地域の習慣で色の選び方が異なる場合もあるので、親族間の贈り物は家族の年長者に確認しておくと安心です。
本数は奇数が基本、迷ったら5本
水引の本数は、慶事では奇数が基本です。中でも5本がもっとも一般的で、誕生日や出産、入学などの一般的なお祝いに適しており、迷った場合は5本を選べば問題ないと説明されています(出典:のし素材「水引の数の違い」)。
7本は、5本よりもていねいな表現として使われます。目上の方や上司、恩師への贈り物、重要な記念日など、特別なお祝いの場面で選ばれることがあります。本数を増やすことで、「いつも以上に心を込めてお祝いしたい」という気持ちを表すわけです。
本数の選び方は、中身の金額によって決めることが多いともいわれます。気軽なお礼やお中元なら5本、改まったお祝いで中身も相応のものなら7本、というように、贈るものとのバランスで考えるとちぐはぐになりません。
なお、3本の水引が使われることもあると紹介する資料があります。ただし、改まったお祝いでは5本以上が選ばれることが多いため、迷ったときは5本を基準にし、相手や場面に合わせて7本を検討する、という順番で考えるとスムーズです。
| 使う場面 | 出産祝い、入学祝い、新築祝い、開店開業祝い、お中元、お歳暮、お年賀、お礼など |
| 本数の目安 | 5本が基本。目上の方や特別なお祝いには7本 |
| 色の目安 | 紅白が一般的。慶事の色(紅白・赤金・金銀)から選ぶ |
| 避ける場面 | 結婚式・婚礼関連、お見舞い、快気祝い(結び切り・あわじ結びを使う) |
婚礼の10本は「5本2束」で両家の結びつきを表す
結婚式のご祝儀袋や結婚祝いでは、10本の水引がよく使われます。10本は偶数ですが、5本を2束合わせた「5本2束」と考えるのが一般的です(出典:bizoceanジャーナル)。
「慶事は奇数が基本なのに、なぜ婚礼は10本なのか」と疑問に思う人も多いでしょう。これは、5本の束が2つ合わさることで、新郎新婦、あるいは両家が結びつくことを表していると説明されています。奇数の考え方を保ったまま、二つのものが一つになる意味を重ねているわけです。
10本の水引は、結婚式のほか、結納や長寿祝い、公式な行事など、格式の高い場面で使われるとされています。結婚式に持参するご祝儀袋を選ぶときは、結び目があわじ結びか結び切りで、本数が10本のものを選ぶと、一般的な選び方にそろいます。
注意したいのは、10本という本数だけを見て「格が高いから、ほかのお祝いにも使える」と考えないことです。10本の水引は、結び方と組み合わせて婚礼向けに作られていることが多いため、出産祝いや新築祝いには、5本や7本の花結びを選ぶのが自然です。婚礼用の水引の種類については、別の記事で詳しく整理しています。

9本と4本は資料によって扱いが分かれる
本数でとくに迷いやすいのが9本と4本です。4本は「死」を連想させるため避けるとされるのが一般的です。一方、9本については、資料によって説明が分かれています。
慶事には5本・7本・9本の奇数を使うと説明する資料がある一方で、9本は奇数ではあるものの「苦」に通じるとして避ける考え方を紹介する資料もあります。祝賀の水引には5・7・9の奇数を用いるという説明もあり、9本を使うかどうかは、地域や作り手、家の考え方によって受け止め方が違うといえます。
こうした違いがあるときは、どちらかを「正解」と決めつけないことが大切です。受け取る相手が「苦」を連想するかもしれないと少しでも気になるなら、はじめから5本か7本を選んでおけば、誰にとっても気にならない選び方になります。
具体的には、店頭で9本の水引の袋を見かけたとしても、無理に選ぶ必要はありません。一般的なお祝いは5本、ていねいにしたいときは7本、婚礼は10本。この3つを軸にしておけば、本数で迷うことはほとんどなくなります。
「ていねいにしたいから」と、出産祝いに婚礼用の10本・あわじ結びの袋を選ぶ失敗があります。原因は、本数だけで格を判断し、結び方の意味を見落とすこと。対策は、先に結び方(花結びか結び切りか)を決め、次に本数を5本・7本から選ぶ順番にすること。婚礼の10本は「5本2束」で両家の結びつきを表す特別な本数です。
水引はいつから使われている?1400年の歴史と飯田水引
起源は607年、献上品に結ばれた紅白の麻ひも
水引の歴史は長く、1400年ほどの歴史があると紹介されています。その始まりは607年(推古期)にさかのぼるとされ、遣隋使が帰国の際、献上品に紅白で染め分けた麻ひもを結んで持ち帰ったことが起源という説があります(出典:飯田水引の歴史)。
この出来事をきっかけに、宮中への献上品は紅白のひもで結ぶのが習慣になったと伝えられています。つまり水引は、はじめから「大切な相手への贈り物を、心を込めて届ける」ためのしるしだったのです。現在のお祝いの袋に水引がかけられているのも、この考え方を受け継いでいるからといえます。
ただし、水引の起源には複数の説があります。古代の献上品に結ばれた紐に由来するという説のほか、贈答の習慣そのものから発展したという考え方もあり、一つに断定できるものではありません。歴史に触れるときは「起源とされる説の一つ」として紹介するのが適切です。
こうした背景を知ると、花結びを選ぶときの気持ちも少し変わってきます。「何度でもお祝いさせてほしい」という意味を、長く受け継がれてきた形で届ける。そう考えると、袋一枚を選ぶ時間もていねいなものになります。
宮中から武家社会へ、明治以降に一般の暮らしへ
水引という呼び名が定着したのは、平安時代とされています。宮中で献上品を紅白のひもで結ぶ習慣が続き、やがて武家社会でも使われるようになりました。そして明治以降に一般化し、現在の私たちの暮らしに続いています。
この流れからわかるのは、水引が長いあいだ「改まった場面の作法」として扱われてきたということです。一般の人が日常的に水引を使うようになったのは、歴史全体から見ると比較的最近のことです。だからこそ、結び方や本数の使い分けには、宮中や武家社会で重んじられてきた意味づけが今も残っています。
具体的には、慶事と弔事で色を分ける考え方や、奇数を用いる考え方などが、その名残といえます。花結びと結び切りの使い分けも、「繰り返しを願うかどうか」という、贈る場面の意味を大切にしてきた文化から生まれたものです。
一方で、明治以降に全国へ広がる中で、地域ごとに独自の習慣も生まれました。弔事の色やあわじ結びの扱いが地域によって異なるのは、そのためと考えられます。歴史を知っておくと、「地域によって違う」ことにも納得しやすくなります。
全国生産量の70%を占める長野県の飯田水引
現在、水引の産地として知られるのが、長野県飯田市で生産される飯田水引です。県指定伝統工芸品に認定されており、地元産の和紙を原料としています。水引の全国生産量の70%を占めているとされています(出典:飯田水引 公式サイト)。
飯田の水引づくりは、もともと髪を結ぶ「元結(もとゆい)」の生産から始まりました。江戸時代に飯田藩が製紙や元結づくりを奨励し、地域の良質な水と気候にも支えられて、飯田の元結は江戸で高い評価を得たといわれています。平安時代に編纂された『延喜式』には、伊奈郡から紙が献上された記録もあります。
転機になったのは、1871年(明治4年)の断髪令です。まげを結う人が減り、元結の需要は急激に落ち込みました。そこで職人たちは、元結の技術を応用して水引の製造へ大きくシフトし、危機を乗り越えました。その後、冠婚葬祭の需要の高まりとともに、全国の水引の多くを生産する産地へと成長していきます。
近年は、ライフスタイルの多様化に合わせて、アートやギフト関連の新しい分野にも取り組んでいるとされています。私たちが手に取る祝儀袋の水引の多くが、こうした産地の技術に支えられていると知っておくと、花結び一つにも作り手の歴史を感じられるはずです。
水引は607年の献上品に結ばれた紅白の麻ひもが起源とされる説があり、宮中から武家社会を経て、明治以降に一般の暮らしへ広がりました。現在は長野県の飯田水引が全国生産量の70%を占めるとされます。結び方や色の使い分けは、贈る場面の意味を大切にしてきた長い歴史の名残です。
立場別にどう使い分ける?ゲスト・結婚する二人・お祝いを贈る人
結婚式に招かれたゲストは「ご祝儀袋の結び目」だけ確認すればいい
結婚式に招待されたゲストが花結びについて気にすべきことは、実はシンプルです。ご祝儀袋の結び目が花結び(蝶結び)になっていないか、結び切りかあわじ結びになっているかを確認する。これだけで、水引の選び方で困ることはほぼありません。
ゲストの立場で花結びが問題になりやすいのは、慌てて袋を用意したときや、自宅にあった「お祝い用」の袋を流用しようとしたときです。以前に出産祝いで使った袋の残りなどは、花結びであることが多いので、結婚式にそのまま使わないように注意しましょう。
具体的な確認の順番としては、まず結び目、次に水引の本数(婚礼向きの10本か)、最後に袋の用途表示です。表書きは「寿」や「御結婚御祝」などになっているものが多く見られます。これらがそろった袋を選べば、ゲストとして一般的な形に合わせられます。
なお、ご祝儀袋のデザインは近年多様になっていて、カジュアルな柄の袋も増えています。同僚や友人の結婚式ではそうした袋を選ぶ人もいますが、親族の結婚式や、上司・恩師が主催側にいる場合は、落ち着いたデザインを選ぶと安心です。
結婚する二人・両家は「贈る場面」と「お返しの場面」を分けて考える
結婚する本人や両家の立場では、水引を使う場面が増えます。結納品や、両家の顔合わせで用意する品物などです。このとき大切なのは、「結婚そのものに関わる贈り物」と「それ以外の挨拶」を分けて考えることです。
結婚に直接関わるもの、つまり結納品や結婚のお祝いに関する品物には、ほどけない結び切りやあわじ結びを使うのが一般的です。婚礼にまつわる場面では、「一度きりであってほしい」という考え方がすべての基本になります。
一方で、結婚の準備期間中にも、お世話になった方へのお礼やお中元・お歳暮など、結婚とは別の挨拶の場面があります。こうした場面では、結婚の時期だからといって結び切りにそろえる必要はなく、これまでどおり花結びを選んで問題ありません。
迷いやすいのは、両家の顔合わせで渡す手土産です。結婚に関わる場面ではありますが、どのような掛け紙にするかは地域や家ごとの考え方によって異なる場合があります。両家で事前に相談し、双方の習慣に合わせておくと、当日に気まずさが生まれません。

出産・新築などのお祝いを贈る人は「花結び5本・紅白」を基本に
結婚式以外のお祝い、たとえば友人の出産祝いや親戚の新築祝いを贈る場合は、花結びの出番です。基本は「紅白・花結び・5本」と覚えておけば、ほとんどの場面に対応できます。
この組み合わせが基本になるのは、紅白が慶事の代表的な色で、花結びが「何度あってもよい」お祝いを表し、5本がもっとも一般的な本数だからです。三つの要素がそれぞれお祝いの意味を持っているので、そろえておけば気持ちがまっすぐ伝わります。
具体的な使い分けとしては、目上の方や恩師へのお祝いなら7本に、気軽なお礼や手土産なら5本に、というように本数で調整します。お中元・お歳暮のように毎年贈るものも、同じく紅白の花結びが一般的です。
注意したいのは、お祝いの内容によって例外があることです。病気やけがの回復に関わる快気祝いは結び切り、結婚に関わるお祝いは結び切りやあわじ結びでした。「お祝いだから花結び」と一律に決めず、先に紹介した「もう一度あってほしいか」の問いで確認する習慣をつけておくと、どの立場になっても迷いません。
まとめ|花結びは「何度あってもよいお祝い」の結び方
次にお祝いの袋を選ぶときは、飾りの形ではなく「中心の結び目」を最初に見てみてください。そのうえで「この出来事は、もう一度あってほしいか」と一度だけ問いかければ、花結びを選ぶべきかどうかは自然と決まります。
※水引の色・本数・結び方の扱いは、地域や家によって異なる場合があります。

コメント